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Build Insider発行によせて

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「これからはコンピュータの時代だ」

私が大学に進んだ1980年初頭、世の中にはこんな期待が満ち満ちていました。

私自身もその一人として、情報系学科に進学してプログラマーを目指したいと希望していました。しかし当時はどの大学でも電子・情報系は花形で人気も難易度も高く、とても私の学力ではかなわない願いでした。

情報系学科の学生を学内で見かけると、どこか誇らしそうで、輝いて見えたものです。実際、就職も引く手あまたで、一人の学生をめぐって複数の著名企業が争奪戦を繰り広げる人気ぶりでした。

あれから30余年。気付いてみればソフトウェア開発者という職業は、“K”がいくつも付けられて揶揄され、若者はなりたがらず、あまり尊敬もされない仕事になってしまいました。

「日本人は目に見えるハードウェアのもの作りは得意だが、目に見えないソフトウェア作りは苦手だ」という人がいます。現在のこの国のソフト開発をとりまく現状をみれば、これはあながち間違いではないのかもしれません。

ならば、得意なハードウェア作りに集中すればいいのかといえば、そうは問屋がおろしません。コンピューティング・テクノロジやネットワーク技術の応用は、自動車や家電製品を始めとして、いまやあらゆる領域に広がっています。もの作りのソフト化が急速に進んでいます。ハードウェアだけを切り離して議論しても無意味です。ソフトウェアやサービスと一体化して、全体として付加価値を高めなければ、これからのもの作りは立ち行かない時代になったのです。いまやソフトウェア開発は、もの作りのごく一部を担う存在から、ものづくり全体をデザインし、リードすべき重要な立場へと変貌したといってよいでしょう。

それにもかかわらず、ソフト開発者をとりまく“K”は、改善する兆しもなく、ソフト開発の現場は、若い知性が進んで飛び込む憧れや希望の地にもなっていません。このままでは、ソフトウェア開発だけでなく、もの作り全体が地盤沈下を起こしてしまう。そんな危惧を感じています。

ソフト開発者が生き生きと楽しく、付加価値の高いソフトウェアやサービスを開発し、それがもの作り全般に波及して、多くの成長産業を作り出す。そんな理想を実現するにはどうしたらよいのでしょうか。

答えはわかりません。しかし明らかなのは、これまでどおりでは絶対に解決しないということ。ソフト開発に対して、いま私たちが持っている常識や慣習を根本から疑い、産業構造全体を変えていかなければならないだろうということです。

Build Insiderでは、こうした変化をもたらすための、小さな分水嶺を作りたいと思います。

しかし非力な私たちにできることは、ほんの小さなきっかけを作るところまでです。この分水嶺を大きくして、時代のうねりとするためには、現場を支えるソフト開発者一人一人のお力添えが不可欠です。今後私たちは、オンライン・サイトとオフライン ・イベントを通して、目的達成のための試行錯誤を繰り返します。ぜひともこうした活動に積極的にご参加いただき、活動をより有意義なものとするために、ご意見をお寄せください。

私たちと一緒に、ソフトウェア開発の明るい未来、ニッポンものづくりの明るい未来を切り開いてまいりましょう。

よろしくお願いいたします。

小川誉久

 

2013年4月
Build Insider発行人
株式会社デジタルアドバンテージ代表取締役
小川誉久

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