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Build Insiderオピニオン:大関興治(3)

Build Insiderオピニオン:大関興治(3)

ミライ型エンジニア?

2014年8月12日

「非ITアタマ」を創るために始めてみたこのプロジェクト。なぜ海の家にしたのか? どんな効果があったのか? 昨年のもようを振り返える。

セカンドファクトリー 大関 興治
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 皆さん、こんにちは。

 梅雨明けした途端にものすごく暑くなりましたね。江の島は平日でもたくさんの方々でにぎわい始め、いよいよハイシーズン到来となりました。弊社海の家の目印はズバリ「Surface Pro3」の看板です(笑)。片瀬江ノ島駅から地下道経由で東浜にお越しいただければ階段を上がって目の前に看板が見えますよ。

「Surface Pro3」の看板

 さて、これまでの2回ではなぜ海の家をやったのか? といった内容で書かせていただきましたが、いかがでしたか?

 昨年の「海の家」出店から路面店オープンと続き、今年もまた海の家をやっています。これまでのコラムでは、これらの経験を通じて得られるものは日常の業務では得がたい「気づき」であり、その気づきをどう解釈し、その結果から得られたものを自分たちのビジネスに生かせるスキルとして個々人が身に付けることが重要。ということをお伝えしてきました。

 今回からはもう少し話題を人財育成やサービス開発側に近付けていきますが、お店をやることによる「気づき」の方に関心ある方が多いようでしたら、再度織り交ぜていきたいと思います。ご感想をいただければ幸いです。

ミライに通用するエンジニアって皆さんの中ではどのようなイメージでしょうか?

 私の中ではあえて「デベロッパー」という言葉はなるべく使用しないようにしています。それはエンジニアとデベロッパーは私の中で少し違ったイメージを持っているからです。もちろんセカンドファクトリーの技術者に求めるイメージは前者、エンジニアです。

 もちろん言葉の定義についてここで議論したいわけではありませんので、そのまま読み進めていただければ結構ですが、ミライに通用するエンジニアって皆さんはどのようなイメージを描いていますか?

 次々と現れては淘汰(とうた)されていくデバイスや技術。「10年一昔」とはよく言ったもので、もはや「3年一昔」といったスピード感を感じます。

 新しいデバイスや技術が短いスパンで輩出されていく一方で、ネガティブな話題も無視できません。中でもSIビジネス(セカンドファクトリー内の定義では「開発者をたくさん抱え、人月ビジネスに依存する割合が一定以上ある組織」)については、国内外での優秀で低コストな外国人の方々の活躍や多重下請構造的な問題、マルチベンダーコントロールの難しさ、お客さまからのリードタイムの短縮のご要望など、必ずしも良い話題ばかりではありません。

 もちろんズバ抜けてスキルの高い方々には関係のない話題かもしれませんが、組織を運営する立場である私たちにとっては楽観視できる話題ではありません。

 弊社も創業以来16年、ひたすら差別化戦略を図ってきましたが、この長い年月と昨今のスピード感のあるドライブの中で1つの法則が見えてしまいました。

 それは必ずしも全てのエンジニアが、「長くお客さまに価値を提供できるスキル」と、「今、必要なスキル」を並行して身に付けられていないということです。

 これがなぜ起こっているのか。答えは簡単です。

 組織の中でのポジションや興味の方向性、日頃のチーム内での議論の内容が影響しているのです。ポジションによる影響はやむなしという話題でもありますが、やはり私やセカンドファクトリーのシニアリードの面々が日々考え、議論する「今、何をすべきか」「そのためにどう動くか」を聞ける量が、ポジションによって圧倒的に違ってきます。言い換えると「何を求められているか」を知る機会が均等ではないということです。興味の方向性はアドバイスするのが難しい問題です。ヒトそれぞれですから何とも言えません。組織としてアドバイスをすべき点ではないと考えます。チーム内での議論。これはシニアリードのビジョンの伝え方と現場運営に依存します。

 このようなバラつきがある中でバラつかずに伝えなければいけないこと。

例えば「UX」というキーワード。これをどう捉えるかで、その後の動きが大きく異なります。

 UXが重要という考え方自体は不変ですが、その内容は常に進化しなければいけないと考えています。これまで長いこと「ユーザビリティの向上」が価値向上につながると考えられ、その結果、「UX = UI」のような考え方がありました。間違っているわけではなかったと思いますが、今は大きな間違いです。正しく言えば「それだけでは足りない」ということです。

 PCベースで開発されることが大半だった時代はそれで良かったと思います。それはとても斬新なことだったでしょう。しかし、現在のようなスマートフォンやタブレットが全盛の時代に同じ考えは通用しません。使いやすいUIはマスト。むしろ快適なデータハンドリング、オンライン/オフラインetc、「機能的なユーザビリティの向上」が価値創造を下支えしています。

 つまりはUXの重み付けが大きく変わっているわけです。これまで弊社はUXの専門家を多数育ててきましたが、これまでの知識だけでは通用しない時代に入りました。「UX=価値創造」という意味に置き換えて、学ぶスキルも増やさねばなりません。価値創造という言葉を使っているわけですからビジネスも分からねばなりません。お客さまがもうかってなんぼです。

 開発の工程に当てはめても同じようなことが言えます。

 どれだけ優秀で単価の安い外国の方々が押し寄せ、ポジションを侵食されようとも、あくまで日本人が使うためのシステムなのですから要件定義や上流工程がやすやすと浸食されることはありません。言い換えれば、これはオフショアが相手ではなくても言えることです。しかし、これもUXの話題と同様に「価値創造」のアプローチが求められますから、これまでのスキルの延長線上だけの知識では勝ち残っていくことは難しいでしょう。エンジニアがビジネスを知らなきゃいけないの? 答えはYESだと思います。

 これまでどれだけ「技術的に」優秀だったエンジニアでも、勝ち残っていきたいのであれば、もはや答えはこれまでの延長線上だけに存在しません。これを自分たち自身で気付くためには何が必要でしょうか?

 過去の自分を肯定も否定もできる柔軟性です。

 もう一度お客さまの立場になって考えてみることです。

 言葉で表せば実に簡単そうですが実際にはなかなか難しい。ましてや今日現時点、食えちゃってるわけですからね。

 言葉だけじゃ伝わらない。日頃の仕事だけじゃ得られない。ならばやってみよう! お客さま側の立ち位置で。

 弊社は飲食業界向けにクラウドサービスを提供していることもあり、ステークホルダーの方々と近い体験を短期間で得られる飲食業を選んだわけです。答え合わせがしやすいですからね。

 価値創造のために、そのとき、そのときのトレンドを意識し実践しつつ、それだけにこだわらない柔軟性や臨機応変さ、いくつになってもチャレンジする姿勢。そして「何のために、誰のためにやっているのか」という意識や疑問を忘れない。お客さまや仲間のため(ゴール達成のため)であれば、過去の自分も否定できる度量。それがセカンドファクトリーの定義するミライ型エンジニアです。

 だって、面白い仕事じゃないですか。ずっと第一線で続けたいですよね!

  • * 【おことわり】 言葉の定義は弊社内でのものであり、実際の業界内の定義とは異なる場合があります。

大関 興治(おおぜき こうじ)

大関 興治(おおぜき こうじ)

(株)セカンドファクトリー Chief Visionary Officer

大手私立大学の情シスにて(SI企業より出向)学内システムを構築したのがキャリアのスタート。メインフレームからのダウンザイジングを経験すると同時に、Webテクノロジに大いなる可能性を感じていたこと、あるキッカケを得て、1998年にセカンドファクトリー社を設立。

一貫してビジネス&UXを重要視したチーム形成と開発スタイルを提唱。現在は関連会社2社の取締役ほか、複数の非IT企業の社外取締役として「ヒト」づくりがメインの仕事、かつライフワーク。

 

※以下では、本稿の前後を合わせて5回分(第1回~第5回)のみ表示しています。
 連載の全タイトルを参照するには、[この記事の連載 INDEX]を参照してください。

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1. 大胆な取組で視点を変えよう

ビジネス&UXを重視する「セカンドファクトリー」社代表による「非ITアタマの創りかた」コラム連載スタート。

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2. エンジニアたちが海の家をやってみた

「非ITアタマ」を創るために始めてみたこのプロジェクト。なぜ海の家にしたのか? どんな効果があったのか? 昨年の模様を振り返える。

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今年の海の家プロジェクト、お盆までの前半戦の出来事を紹介。台風の影響をもろに受けた今年のお盆商戦。そんなとき現れた○○おやじとは?

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5. 2年目となった海の家プロジェクト。2014年の結果は如何に?(後編)

2014年の海の家プロジェクトは成功したのか失敗したのか。読者と担当をやきもきさせた後編がついに登場。夏はアツかったのかサムかったのか!?

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