ゼロから分かる電子工作の必須知識シリーズ(4)

ゼロから分かる電子工作の必須知識シリーズ(4)

ダイオード ― 知ると便利な基本部品

2017年1月24日

“Lチカ”で光らせるLEDなど、電子工作でよく使われるダイオード。しかしその使いどころを想像するのは難しい。その特性を詳しく知ることで、なぜそこにダイオードが組み込まれているのかを理解できるようになろう。

Microsoft MVP for Windows Platform Development 初音 玲
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 このシリーズでは、電子工作入門以前の人がスタートラインに立つために知っておいた方がよい情報をまとめていきたいと思っている。

 第4回目である今回は、ダイオードを取り上げる。ダイオードの一種である発光ダイオードLED)は、電子工作の第一歩の「Lチカ(=LEDをチカチカさせる電子回路の基礎中の基礎)」でも使われる部品だ。しかし、それ以外のダイオードはそもそもどこに使うのだろう。

 ダイオードは一方向にだけ電気を流す電子部品である。この説明だけだと、どのようなところに使うのかを想像するのは難しい。そこで今回は、ダイオードの特性を詳しく見ていくことで、なぜ、そこにダイオードが組み込まれているのかを大まかに理解できるように説明していく。

そもそもダイオードとは

 ダイオードは、P型半導体N型半導体の2つを接合したものだ。P型半導体側をアノード、N型半導体側をカソードと呼ぶ(図1)。

図1 ダイオード(上:ダイオードの絵、下:ダイオードの回路図記号)

 回路図記号を見ると矢印のような形で電流が流れる方向が示されているため分かりやすいが、

ダイオードは、アノード側からカソード側方向には電流が流れるが、逆方向には流れない

という特性を持っている。つまり、アノード側に電源のプラス、カソード側に電源のマイナスが来るように回路を組むと電流が流れる(順方向バイアスという)。

 もう少し厳密にこの辺りを理解するために、ダイオードのI-V特性を見てみよう。I-V特性とは、回路に加えた電圧(V)とその時に流れる電流(I)がどのように変化するかを説明するときに用いる。例えば、オームの法則に即した回路であれば、電圧と電流は正比例するので右肩上がりの直線となる。

 このI-V特性について、1SS178というダイオードのデータシート(表1)を使って説明する。

順方向のI-V特性

表1 データシートから「ELECTRICAL CHARACTERISTICS (Ta=25°C)」という電気的・光学的特性の表を引用

 データシートにある表(表1)の[Forward Voltage](順方向電圧)行を見ると、

  • [SYMBOL](記号)列: VF
  • [TEST CONDITION](テスト条件)列: IF=100mA
  • [1SS178](製品名)-
    • [MIN.](最小)列: -
    • [TYP.](標準)列: 0.95
    • [MAX.](最大)列: 1.20
  • [UNIT](単位)列: V

という値が記載されており、つまり「VF(Typ)=0.95V(IF=100mAの場合)」という数値が読み取れる。IF-VF特性グラフ(グラフ1)を見ると、25[℃]のときは0.4[V]くらいの電圧(VF)から電流(IF)が流れ始め、電圧が0.8[V]のときで20[mA]0.95[V]のときには100[mA]の電流に達することが読み取れる。

グラフ1 データシートから「IF-VF」のグラフを引用
グラフ1 データシートから「IF-VF」のグラフを引用

 このことから、ダイオードを順方向バイアスで使う場合、

電圧が小さいときには電流は流れないが、ある電圧を超えると急激に流れる電流量が増加する

ことが分かる。「ダイオードは順方向には電流が流れる」と説明されているが、実際はこのようにもう少し複雑だ。

 この急激に電流が流れ始める電圧を、順方向電圧VFと表す。VFの値はダイオードの種類によって差異がある。一般的なダイオードで1[V]前後、LED(発光ダイオード)で2[V]前後(発光する色によっては3[V]以上)となっている。また、PN接合型ではなく金属とN型半導体を使ったショットキーバリアダイオード(SBD、詳細後述)では0.5[V]前後となっている。

逆方向のI-V特性

 「逆方向」とは、順方向とは逆に、アノード側よりカソード側に高い電圧をかけることを表している。ダイオードを取り扱うには、逆方向の特性も知っておく必要がある。

表2 データシートから「MAXIMUM RATINGS (Ta=25°C)」という最大定格の表を引用

 データシートにある表(表2)の[Reverse Voltage](逆方向電圧)行を見ると、

  • [CHARACTERISTICS](特性)列: 1SS178(製品名)
  • [SYMBOL](記号)列: VR
  • [RATING](定格): 80
  • [UNIT](単位)列: V

という値が記載されており、つまり「VR=80V(最大定格)」という数値が読み取れる。

 IR-VR特性グラフ(グラフ2)を見ると、25[℃]のときに逆方向に電圧(VR)をかけたときは、最小の1[V]くらいの電圧から(全く電流が流れないのではなく、電流値自体は極めて小さいものなので「ほぼ流れない」といってもいいが、厳密には)0.002[μA]くらいの電流(IR)が流れ始め、電圧が最大定格の80[V]0.02[μA]くらいの電流が流れることが読み取れる。

発光ダイオード
図2 発光ダイオード

 発光ダイオードは、ダイオードを流れる電子の持つエネルギーを光エネルギーに直接変換するためエネルギー効率が良い(省エネ)。1962年にニック・ホロニアック氏により発明された当初は赤色だけだったが、現在では赤/緑/青(=光の三原色)、全ての発光が可能になり、そのおかげで白色LEDなども流通している。

 なおLEDは、エネルギー効率は良いが発熱しないわけではないので、放熱などに留意しないと発熱による発火やLED破損なども発生することに留意してほしい。

フォトダイオード

 フォトダイオードは、光を検知すると、流れる電流値が変化するダイオードだ。これには光起電力効果というものを利用している。

フォトダイオード
図3 フォトダイオード

 なお、フォトダイオードの例として紹介しているS9648は、厳密にはフォトICダイオードと呼ばれているもので、フォトダイオードの出力を高利得アンプ*1で増幅する回路が組み込まれている。フォトダイオードの出力値は小さいので、このような増幅回路を内蔵したものが使いやすい。

  • *1 利得ゲインGain)とは、増幅器(=アンプアンプリファイアー)の増幅機能の単位を表す。よって高利得アンプとは、「高い増幅を実現するアンプ」という意味になる。

ツェナーダイオード

 ダイオードは、逆方向の電圧をかけると降伏電圧より高い電圧では、急激に電流が流れるようになる。この特性を意図的に使い、安定化電源の基準電圧を作るために、降伏電圧を低くしたダイオードをツェナーダイオード(Zener Diode)と呼ぶ。日本語では「降伏電圧」で同じだがツェナーダイオードの場合は、「VZZener Voltage)」と表記する。

ツェナーダイオード
図4 ツェナーダイオード

 なお、ツェナーダイオードはその用途から定電圧ダイオードと呼ばれる場合も多い。

定電流ダイオード

 加える電圧や負荷抵抗が変化しても一定の電流を流すことができるダイオードを定電流ダイオードと呼ぶ。

定電流ダイオード
図5 定電流ダイオード

 例として取り上げたE-103のデータシート(表3)を見ると、定電流値(=ピンチオフ電流*210[mA](最小8.00~最大12.0[mA])を3.530[V]の電圧の範囲で流す定電流ダイオードということになる。

  • *2 ピンチオフ電流とは、定電流になる値のこと。ピンチオフ電流には、電圧の下限・上限の範囲がある。
可変容量ダイオード
図6 可変容量ダイオード

まとめ

 ダイオードと一口にいってもさまざまな種類と特性がある。例えば発光ダイオードとフォトダイオードを使ってワイヤレス通信なども可能であったりと、ダイオードだけでもいろいろなことができる。手元に回路図があったら、ダイオードを探して、それがどのような役目を持ったものかを考えてみるのも面白いだろう。

 次回は、基本的な電子部品なのに、どの容量を使えばいいのかがよく分からないため、ダイオードと同様に、言われたとおりに回路に付けるしかないと思われがちなコンデンサーについて取り上げる。

1. 電流と電圧 ― 電子工作を始める前の基礎知識

前知識ゼロだけど電子工作を始めたい人のための連載がスタート。電子工作に入門する前に知っておいた方がよい情報を分かりやすくまとめる。まずは電流と電圧を知ろう。

2. 乾電池 ― 身近で重要なパーツを知る

電子工作の電源としてよく用いられる乾電池の基礎として、種類や容量、接続方法を解説。また、電子工作で使う電圧に合わせる方法も説明する。

3. 抵抗 ― 電圧と電流をコントロールする

電子工作で回路図を組むには抵抗は避けて通れない。抵抗の役割と意味をきちんと理解し、自分自身で抵抗値を計算して適切な抵抗を選択できるようになろう。

4. 【現在、表示中】≫ ダイオード ― 知ると便利な基本部品

“Lチカ”で光らせるLEDなど、電子工作でよく使われるダイオード。しかしその使いどころを想像するのは難しい。その特性を詳しく知ることで、なぜそこにダイオードが組み込まれているのかを理解できるようになろう。

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